3.習い事でもしようかしら


主婦の習い事で

先日、出かけたついでにもらってきたチラシを取り出してみる。

 

「フラワーアレンジメント教室、ハワイアンキルト教室、一日でできるハーブの小物……細かい手作業って苦手なのよね」

 

他にもあった。

 

「フラメンコ、ヨガ、シナリオライター講座、テニスサークル、バドミントン……これといったものがないわね」

 

あんまりヒマだから時間つぶしになにか習おうかと思ってみたものの、興味を持てるものがみつからない。

 

(私って、趣味がなかったのね。今まで仕事ばかりしていて気づかなかったけど、専業主婦になって時間があり余るほどあると、なにをしたらいいのかわからないなんて……仕事をしていたときは専業主婦をうらやましく思ったことさえあったのに)

 

なにも用事はなかったけれど、家にいるのも退屈なのでとりあえず駅前のデパートにでも行ってみることにした。

 

(なにを着て行こうかな)

 

梅雨が明けて、本格的に暑くなっている。

 

Tシャツとジーンズでもいいんだけど、たまにはおしゃれしてでかけてみようと思った。

 

(そうだ、去年の秋にセールで買ったワンピース、まだ一度も着てないんだわ。あれを着てみようかな)

 

タンスの奥から取り出した白いワンピースは、ガーゼを何枚も重ねたような生地でできている。

 

一枚一枚の布地はかなり透けているけれど、重ねることで下が透けて見えないように工夫されていた。

 

ふと思いついて先日購入したランジェリーを身につけることにする。

 

薄いベージュのサンダルを履くつもりなので、ストッキングとガータベルトはつけないことにした。

 

夏らしい籐のバッグを持って玄関の外に出ると、ちょうど左隣りの家のドアが開けられたところだった。

 

「こんにちは」

 

「あ、どうも」

 

由美子が声を掛けると、とまどっているような頼りない応えが返ってくる。

 

課長の家の中学生だ。

 

もう何年も会話をしたことがない。

 

前に話したのは由美子が結婚してここへ越してきたばかりの頃で、隣りの息子はまだ小学生だった。

 

ランドセルを背負って、走り回るかわいらしい子供だったのに、すっかり思春期の男の子になっている。

 

なんだか、懐かしいような気持ちになって由美子は話しかけた。