17.夫婦の寝室


夫婦の寝室

こんなにひとりの女のことばかり考えてしまうなんて、裕之には初めての経験だった。

 

(俺、どっか、おかしくなったみたいだ。他のことが考えられないよ。由美子さんのことしか頭にないんだ)

 

拒絶されるかもしれないという恐れを感じながら、裕之はとうとう我慢できずに隣りの呼鈴を押した。

 

「はい」

 

Tシャツに短パン姿で部屋の掃除をしていたらしい由美子がドアを開ける。

 

「あの……火曜日からずっと母親のところに行ってて、それで……」

 

それからなにを言えばいいのかわからない。

 

連絡しないでごめんなさい。

 

会いたかったんです。

 

そう言えるほどの仲になっているわけではなかった。

 

「どうぞ、入って」

 

「はい、お邪魔します」

 

リビングのソファに座ると先週のことを思い出してしまう。

 

「ちょっと待っててね」

 

そう言って、由美子が掃除機を片付けて、アイスコーヒーを運んでくる。

 

「今日は暑いから、冷たいコーヒーでいいよね」

 

ストローでアイスコーヒーを飲んでいる由美子の横顔を眺める。

 

(全然、化粧してなくてもこんなにきれいなんだ、由美子さん)

 

「どうしたの?今日はおとなしいのね」

 

由美子が至近距離で裕之の顔を覗き込みながら微笑む。

 

(初めから隣りに座ったってことは、してもいいってことだよね)

 

裕之の両手が由美子の頬をはさんで、顔が近づいても由美子は逃げなかった。

 

目を閉じた由美子の唇に自分の唇を重ねた裕之が、口の中に舌を入れる。

 

由美子はそれに応えた。

 

舌が絡み合い、互いの唾液が混ざり合う。

 

裕之はコーヒーの味を、由美子は使ったことのない歯磨き粉の味を舌で感じた。

 

Tシャツの胸を触ると、思ったとおりノーブラの由美子の乳首が固く尖っている。

 

(里沙よりは小さいけど、手にすっぽり収まってちょうどいいかも)

 

「んふっ……」

 

裕之の指が乳首をかすめるたびに、由美子の鼻から息が漏れる。

 

「由美子さん、ベッドでしたい。ダメ?」

 

夫婦の寝室に入るのはことわられると初めから思っていた。

 

だめだと言われたら、それならここでしよう、と言うつもりだった。